ロナルド・バーネット教授講演録|第5回/全5回|討論(質疑応答)――リーダーシップ、マネジメント、差異と共に生きること

ロナルド・バーネット教授講演録の第5回。緊張関係、承認、リーダーシップ、マネジメント、大学の意思決定をめぐる討論(質疑応答)全文を収録します。

討論(質疑応答)

リーダーシップ、マネジメント、そして差異と共に生きること

司会者

予定の時間が残り少なくなってまいりましたが、ここで質疑応答に移ります。

ご質問のある方は、手を挙げて、お名前とご所属をおっしゃってください。

砂川 和範教授(中央大学)

ご講演、ありがとうございました。

中央大学の砂川和範です。

確認のため、一点質問させてください。

先生は、二つのものを区別されています。

緊張関係は解消することができる。

しかし、解消不能な対立は解消できない。

そして先生は、新たなエートスを、ホネットの承認と尊重の考え方に基づかせています。

しかし、承認は通常、最終的には和解を求めるものです。

一方、先生が述べられる、解決のない解消不能な対立という考え方は、むしろテオドール・アドルノの否定弁証法に近いように思われます。

つまり、消えることのない要求と共に生きるという考え方です。

そこでお尋ねします。

先生のエートスは、どちらなのでしょうか。

統一を目指す和解なのでしょうか。

それとも、決して解消されることのない対立を受け入れることなのでしょうか。

以上が私の質問です。

ロナルド・バーネット教授

どうもありがとうございます。

大変重要なご質問を、ありがとうございます。すぐに、簡潔にお答えすることもできます。

私の頭はアドルノと共にあり、私の心はホネットと共にあります。

しかし、もう少しお話しして、両方の立場を同時に成り立たせることができるか、両者のいずれにも正当な位置を与えることができるか、考えてみたいと思います。

この問いは、次のように表すことができます。

深刻な意見の対立が存在する状況に、終着点はあるのでしょうか。

私たちは、ただ互いに話し続け、議論し続けることができるのでしょうか。

それとも、何らかの解決が可能なのでしょうか。

これはもちろん、大学が日々、数多くの相互に対立する課題に直面している状況において、極めて重要な問題です。

世界が不確実であり、私たち自身も自らの考えを明確にできないとき、どのように前へ進めばよいのでしょうか。

これは、極めて重要な問いです。

特に一部の理論家の議論に耳を傾けるならば、この問題に解決はないと言わざるを得ないでしょう。

議論は、続けられなければなりません。

批判は、聞かれなければなりません。

対立は、表に出されなければなりません。

対話を続けるための余地が、確保されなければなりません。

私自身の大学が、私が退職してから何年も後に「Disagreeing Well」という取り組みを始めたことに、私は深く感銘を受けています。

互いに話し続け、差異や意見の対立を表明することのできる場を、私たちは設けることができるのでしょうか。

だからこそ私は、リーダーシップとマネジメントを区別したいのです。

どちらも極めて重要ですが、両者は異なります。

リーダーシップには、この対話を開くという課題があります。

マネジメントには、意思決定を行うという役割があります。

どちらも極めて重要です。

一方だけで、他方なしに成り立つことはできません。

また、私に送っていただいた日本の政策文書に「知恵」という言葉が含まれていたことにも、私は深く感銘を受けました。

皆さんの政府は、大学との関係で知恵について語っています。

しかし、大学の内部に開かれた対話がなければ、知恵ある大学を実現することはできません。

知恵は、対話と地平を開くことを意味します。

そこでは、異なる考え、見解、構想、希望、願いが一つの場に集まり、表明されなければなりません。

それが、リーダーシップの役割の一部です。リーダーシップは、その対話を導かなければなりません。大学外部の異なる文化を大学内部へと翻訳する役割を果たさなければなりません。さらに、大学内部の異なる文化が、互いを理解できるよう助けなければなりません。

これらは、リーダーシップにとって、極めて高度で困難な役割です。

そして、そのような地平を背景として、マネジメントが重要になります。

マネジメントは、困難な意思決定を行います。委員会を開くと、大学教員は対話を続けることには非常に優れていますが、なかなか意思決定を行わないものです。

通常、委員会の後には、議事録が作成されます。議事録には、それぞれの議題について、どのような決定がなされたのかが記載されなければなりません。それは、極めて明確でなければなりません。

何が決定されたのでしょうか。

どのような決定に至ったのでしょうか。

「何も決定されなかった」と記録するのではありません。

そして、非常に困難な状況を背景としながらも、決定に至ることが極めて重要です。

私たちには、両方が必要です。

私たちには、地平が必要です。

対話が必要です。

意見の相違が必要です。

そして、意思決定が必要です。

私たちには、両方が必要なのです。

したがって、大学の課題とは、自らが置かれている困難で、激動し、厳しく、解消不能な対立をはらんだ状況を十分に認識しながら、意思決定を行うことです。

そして、これは大学のあらゆるレベルで行われなければなりません。学長と大学執行部による毎週の会議から、プログラム担当チーム、そして一つの授業科目のために小規模な担当チームをつくり始めた若手教員に至るまでです。

意思決定は、行われなければなりません。

そして、これらの困難な問題を十分に認識した上で、意思決定を行おうではありませんか。

ありがとうございました。

司会者

ありがとうございました。

予定の時刻をすでに過ぎておりますので、これで本セッションを終了しなければなりません。

バーネット教授、ありがとうございました。

皆さま、どうぞ教授に温かい拍手をお願いいたします。

日本語版刊行注記

本稿は、著者確認・修正版英語講演録を底本として作成した日本語版である。通読・英日対照確認・用語統一確認・日本語校閲を行い、承認済みの修正を反映したVersion 1.0 Finalとして確定した。

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