2025年度 調査研究・資料収集活動
総合教育研究財団(Educational Research Foundation:ERF)は、2025年度において、高等教育の未来を形づくる重要なテーマについて、国内外の政策動向や研究成果の調査、資料の収集・分析を継続的に行いました。
特に、「生涯学習」「高等教育の国際化」「高等教育におけるデジタル化・AIの活用」、そして「AGI(汎用人工知能)とシンギュラリティ」を重点研究分野として取り組みました。
生涯学習(Lifelong Learning)
少子化の進展により、日本では大学進学年齢人口の減少が続く一方、社会人学生の割合は欧米諸国と比べ依然として低い状況にあります。このような中、大学には若年層への教育に加え、生涯にわたり学び続ける人々を支える役割がますます求められています。
当財団では、イギリスで2026年から導入される Lifelong Learning Entitlement(LLE) や、EUにおける European Pillar of Social Rights、マイクロ資格(Micro-credentials)、リスキリング・アップスキリング政策などを調査するとともに、European Universities Initiative における社会人学習者への対応やハイブリッド・モビリティの展開についても研究を行いました。
また、AI時代においては専門知識だけでなく、学際的な学び(Interdisciplinary Learning)、批判的思考(Critical Thinking)、リベラルアーツ教育など、人間中心の教育の重要性が一層高まることについても検討を進めました。
高等教育の国際化
高等教育の国際化は、従来の学生交換を中心とした取組から、大学間の戦略的パートナーシップ、共同教育課程、オンラインを活用したハイブリッド・モビリティなど、多様な形態へと発展しています。
当財団では、EUが推進する European Universities Initiative や European Degree の制度設計、共同マイクロ資格の導入、Erasmus+ の新たな展開について継続的に調査しました。また、デジタル技術の進展を背景として、Virtual Exchange や Internationalisation at Home といった新しい国際化のあり方についても研究を進めました。
こうした動向は、AI時代における国際連携のあり方や、日本の大学の国際化を考える上でも重要な示唆を与えるものとなっています。
高等教育におけるデジタル化・AIの活用
生成AIをはじめとするデジタル技術の急速な発展は、教育・研究・大学運営のあらゆる場面に大きな変化をもたらしています。
当財団では、EUの Digital Education Action Plan をはじめとする政策動向や、大学におけるAI活用事例を調査しました。また、AIガバナンス、学術的誠実性(Academic Integrity)、AIリテラシー、倫理的課題などについても継続的に研究を行いました。
さらに、ハイブリッド学習、ラーニング・アナリティクス、個別最適化学習など、AIとICTを活用した新たな教育モデルについても情報収集と分析を進めました。
AGIとシンギュラリティ
近年、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の研究開発が急速に進展し、その社会的・経済的影響について国際的な議論が活発になっています。
当財団では、シンギュラリティ(技術的特異点)に関する主要な研究や将来予測を調査するとともに、高等教育、雇用、人間の知的活動、社会制度に及ぼす影響について研究を進めました。
AI技術が急速に発展する時代において、大学は知識を伝達するだけでなく、人間の創造性、倫理観、協働力、そして社会的責任を育む場として、その役割をさらに高めていくことが期待されています。
総合教育研究財団は、今後も国際的な研究成果や政策動向を継続的に調査・分析し、その知見を広く社会と共有することを通じて、日本の高等教育の発展と国際連携の推進に貢献してまいります。
関連資料(Related Resources)
本活動に関連して、当財団では以下のテーマについて継続的に調査研究を行っています。
- 生涯学習(Lifelong Learning)
- 高等教育の国際化(Internationalisation of Higher Education)
- 高等教育におけるAI・デジタル化
- AGIとシンギュラリティ
▶ 知見・論考を見る
CGHE Annual Conference 2026 参加報告
オックスフォード大学|2026年4月
2026年4月、総合教育研究財団(ERF)は、英国オックスフォード大学で開催された Centre for Global Higher Education(CGHE)Annual Conference 2026 に参加しました。
今年のテーマは 「Navigating the Equity Crisis in Global Higher Education(グローバル高等教育における公平性の危機をいかに乗り越えるか)」 でした。世界各国から230名を超える研究者や大学関係者、政策担当者が集まり、30のセッション・ラウンドテーブルで140件を超える発表が行われました。
会議を通じて特に印象に残ったのは、「卓越性(Excellence)」と「公平性(Equity)」をどのように両立させるかという問いが、ほぼすべての議論の底流に流れていたことです。
大学への進学機会を広げながら教育の質を維持すること、限られた財政の中で公共的な使命を果たすこと、さらには人口減少やAIの進展など急速な社会変化に対応することなど、多くの国が共通する課題に直面していることを改めて実感しました。
私たちが特に関心を持って参加したのは、生涯学習(Lifelong Learning)、高等教育へのアクセス拡大(Widening Participation)、国際学生の流動性、そして複雑化する国際情勢の中で大学が果たすべき役割に関するセッションです。また、オンラインと対面を組み合わせた新しい国際交流や、国境を越えた教育・研究ネットワークなど、大学の国際化も新たな段階に入りつつあることを強く感じました。
これらの議論は、日本の大学が直面している課題とも数多く重なります。少子高齢化、人口減少、AI技術の急速な進展といった環境変化の中で、大学はどのような価値を社会に提供していくのか。その問いに対するヒントを数多く得ることができた会議でした。
ERFでは、今後も海外の高等教育政策や大学改革の動向を継続的に調査・研究し、その知見を日本の大学関係者へ広く共有してまいります。
THE Europe Universities Summit 2026 参加報告
イタリア・ミラノ|2026年5月
2026年5月、総合教育研究財団(ERF)は、イタリア・ミラノで開催された Times Higher Education(THE)Europe Universities Summit 2026 に参加しました。
サミットにはヨーロッパをはじめ世界各国から大学学長、研究者、政策担当者が集まり、AIやデジタル技術の進展、国際情勢の変化、持続可能な社会の実現など、大きく変化する時代における大学の役割について議論が行われました。
今回、特に印象深かったのは、大学間の協働が、個々の大学の取り組みを超えた新しい段階に入っているということです。
ヨーロッパでは、University Alliances(大学連合) を中心に、教育・研究・学生交流を国境を越えて共同で進める取り組みが着実に広がっています。オンラインと対面を組み合わせた教育や共同学位、教職員・学生の柔軟な交流など、新しい大学の姿が少しずつ現実のものとなっていました。
また、AI時代の大学教育についても活発な議論が行われました。専門知識だけではなく、批判的思考力、創造性、適応力、倫理観、そして国際的視野を備えた人材を育成することが、これまで以上に重要であるという認識が多くの参加者に共有されていました。
これらの議論は、ERFが取り組む「高等教育の国際化と大学間連携」「学際的研究と知の共創」「AIと高等教育の未来」といったテーマとも深く重なっています。
今回の参加を通じて、欧州の大学改革は制度だけではなく、「協働」を軸とした新しい大学像の構築へ向かっていることを実感しました。ERFでは、今後もこうした動向を継続的に調査し、日本の大学関係者へ紹介するとともに、日本と欧州の大学を結ぶ研究・対話・協働の促進に取り組んでまいります。
