第45節 継続学習と生涯学習〜結論
第45節 継続学習と生涯学習
AGIに継続学習が必要であるのと同じように、人間にもAI時代の継続学習が必要です。
一度大学を卒業した時点の知識で、生涯の職業生活を送ることはますます困難になります。
しかし、人間の生涯学習はAIのモデル更新とは異なります。
人間は、
- 職業
- 家族
- 社会的役割
- 価値観
- 身体
- 年齢
の変化の中で学びます。
したがって、生涯学習は技能更新だけではなく、自己理解と社会参加の再構成を含みます。
大学は、AIの継続学習技術を利用しつつ、人間に固有の生涯にわたる成長を支える制度でなければなりません。
第46節 AIを一つの完成品として導入してはならない
大学がAIを導入する際、現在のモデルを完成した技術として扱うのは危険です。
現在のAIは、一つの長期的パラダイムの途中段階にすぎない可能性があります。
したがって大学は、
- 特定企業の一つのモデルに依存しすぎない
- データと教材を移行可能にする
- システムの相互運用性を保つ
- 技術変更に対応できる組織を作る
- 教職員が原理と限界を理解する
- 定期的に教育効果とリスクを再評価する
必要があります。
AI導入は一度きりの設備購入ではなく、継続的な制度設計です。
第47節 Ecological Universityと技術の多元性
Ronald BarnettのEcological Universityは、大学が単一の論理に従属することを避け、複数の生態系との関係を引き受けることを求めます。
AIのパラダイム転換を考える際にも、
- 技術効率
- 人間の教育
- 社会的公正
- 環境負荷
- 研究の自由
- 民主的統治
- 文化的多様性
を同時に考える必要があります。
最も高性能なAIパラダイムが、社会的に最も望ましいとは限りません。
たとえば、極めて効率的でも、
- 少数企業に権力を集中させる
- 説明不能である
- 人間の自律性を弱める
- 膨大な環境負荷を生む
なら、別の技術的選択肢を維持する必要があります。
大学は、一つの技術パラダイムを無批判に受け入れるのではなく、複数の技術的・社会的可能性を保持する場であるべきです。
第48節 大学は「次のパラダイム」を予言する必要はない
大学が将来のAI方式を正確に予測することはできません。
しかし、予測できないから何もできないわけではありません。
大学には、
- 基礎理論を研究する
- 異分野間の対話を作る
- 長期的研究を支援する
- 現行技術の限界を検証する
- 複数の将来シナリオを考える
- 技術の公共的意味を議論する
ことができます。
原報告書がパラダイム非依存の基礎研究を求めるのと同様に、大学も特定技術への適応だけでなく、変化に耐え得る知的・制度的能力を形成する必要があります。
結論
『From AGI to ASI』のSection 5.2は、AGIからASIへの第二の経路として、アルゴリズム的パラダイム転換と、現在のパラダイムの段階的進化を検討しています。
現在のAIパラダイムは、
- 大規模Transformer
- 人間生成データによる事前学習
- 予測誤差の最小化
- 指示調整や強化学習
- 固定パラメータモデル
- 推論時探索
- 検索
- ツール利用
から構成されています。(原報告書、Section 5.2)
この枠組みに、
- 継続学習
- 長期記憶
- 無制限に近い文脈
- 作業記憶
- 世界モデル
- 長期計画
- 環境との相互作用
- 動的な推論時計算
を加えることは、現在のパラダイムの進化です。
こうした進化によって、AGI、場合によってはASI領域まで到達できる可能性は排除されていません。
しかし、現在の方法が、
- 幻覚
- 継続学習
- 長期的な頑健性
- 指示の権限管理
- 人間の概念を超える抽象化
- データ・計算・エネルギー効率
の問題を解決できない場合、より根本的なパラダイム転換が必要になります。
候補には、
- 新しいアーキテクチャ
- 新しい最適化法
- 強化学習中心の事前学習
- 明示的な世界モデル
- 神経模倣型ハードウェア
- 発火型ニューロン
- アナログ計算
- 新しい記憶・再帰構造
などがあります。(原報告書、Section 5.2)
しかし、真のパラダイム転換は、その性質上、事前に詳しく予測できません。
したがって、この経路についての最も重要な準備は、次の技術を当てることではありません。
知能、学習、計算、記憶、意思決定、安全性の限界について、特定のパラダイムに依存しない基礎理解を深めることです。
そして高等教育にとって重要なのは、現在のAI技術を教えることだけではありません。
既存パラダイムの前提を問い、異分野の知識を結び付け、まだ存在しない代替的な可能性を構想できる人間を育てることです。
第6回では、原報告書のSection 5.3に進み、第三の経路であるRecursive Self-Improvement――AIがAI研究を加速し、改良されたAIがさらにAI研究を加速する再帰的自己改善を詳しく解説します。
